2011年12月12日月曜日

人類発達史における「ネット」のポジション

ネットがもたらす社会変化
今やネットは社会に大きな影響を与えています。
今年の1月におこったジャスミン革命は、記憶に新しいと思います。 チュニジアで起こったこの革命は、Facebookを始めとするSNSで運動が始まり、SNSを通じて国民が結束し、政府を倒す運動となったのです。
ジャスミン革命に続くように、エジプト、リビアでも大規模な暴動が起こり、独裁政権の崩壊に繋がりました。これらの国でも、やはりSNSが反政府運動に重要な役割を果たしています。

日本にいる私たちも、 ネットを通じて事件発生時の様子をリアルタイムに知ることが出来ました。私たちがネットで得た情報は、マスコミよるのものだけでなく、一般人が撮影した写真や映像も多く含まれていました。
一方で、日本のテレビや新聞が発信する情報は少なく、また発信するタイミングが遅いため、日本のマスコミに愛想を尽かした人も多かったと思います。

これがネットの力であると思います。つまり、ネットが人々のコミュニケーションのかたち変えることにより、政府などの権力機関や、新聞社やテレビ局などのマスコミを弱体化させてしまうのです。 



ネット普及前と普及後の社会構造
ネット普及前と、ネットが普及した現代でどのように社会のコミュニケーションがどのように変化したのでしょうか。

ネット普及前、私たちは二つのコミュニケーションによって、情報交換を行っていました。
一つは、マスコミを経由するコミュニケーションです。私たちは新聞を読んで政治家の動向を知ったり、テレビで芸能人を見たりします。もう一つは、人と人の会話や手紙、電話によるコミュニケーションです。
これを図にしたのが図1です。



 政治グループや芸能グループ、料理研究家などを含めるプロフェッショナルグループが上位にあり、その下に新聞社やテレビ局などを含めるマスコミグループ、一番下には市民グループがあります。
プロが発信する情報は、マスコミを通して市民に広く拡散されます。情報は必ず上から下に流れ、逆流することはありません。
各プロはマスコミにより市民に認知されるので、マスコミによって権力・権威を維持できていたと考えることもできます。

一方、市民は電話や手紙を使って他の市民に情報を発信します。発信者と受信者は基本的に1対1です。プロによる情報発信は社会に与えるダイナミックな影響に比べると、市民の情報発信が社会に与える影響はわずかです。


ネット普及後の社会では、どのように変わったのでしょうか。
これは図2に示しました。


 ネット普及前に存在した、プロ、マスコミ、市民グループに加えて、インターネットが存在します。インターネットにより、市民が他の市民に情報を送ることが可能になりました。

ここで重要なポイントは、ネットを使うことで、市民は不特定多数の市民に対して自由に情報を発信できるようになった、ということです。つまり、かつてはプログループのみが情報を多数の市民に拡散して発信できたのに対して、今では市民が同じことが出来るのです。
これにより、マスコミやプロの社会的地位は相対的に低下していきす。これが今日、目の当たりにしている社会状況です。



ネットは三大発明を超えるか

人類の発達史において、人類が獲得した新しいコミュニケーションスタイルにより、社会や文明が進化するというシーンが幾度かありました。

人類が「言葉」を獲得する前は、コミュニケーションは原始的な意思表示に限定され、家族単位の小集団しかありませんでした。それが言葉の獲得により、複雑な共同作業が可能になり、部族や村単位の集団で農業や狩りを営むようになります。
「文字」の発明は、さらに大きな社会形成を可能にしました。世代や場所を越えて知識を共有することが可能となったため、宗教や法典が出来、それにより国が形成されます。
「印刷」の発明は社会をさらに発展させました。読み書き能力は国民に浸透し、近代国家形成を促しました。

言葉・文字・印刷を「情報の三大発明」と呼んで良いのではないでしょうか。そしてこれからは、ネットを加えて「情報の四大発明」となのかも知れません。
ちなみにテレビは、これらに比べて社会に与えた影響は限定的であったと自分は考えています。というのも、機能的には印刷の発展形に過ぎないからです。


ネットが既存の権力を弱体化させますが、最終的にどんな社会になるのかはなってみないと分からないところもあります。果たしてそれが平和的で恵まれた社会なのかあるいは混沌として疲弊した社会になるのか。それは、今後ネットが進化していく方向性に依るのかも知れません。
ネットを促進する側に立つ自分としては、前向きに捉えていきたいところです。

もっとよく知りたい方は、西垣通先生の『基礎情報学ー生命から社会へ』を読んでみてください。

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